それぞれのお正月

例会のあと、なんとなく1人暮らしのご婦人3人とお茶を一緒にすることになった。

6年前に主人と死別したTさん(67歳)は、「独立した2人の子どもの家庭とは別世帯で主人と2人でのんびりと暮らしていました。もともと無口でなにを考えているのかわからない性格の人でしたが、いるというだけで、退屈の虫を抑えていけば食事をつくることも、身嗜(みだしな)みを整えることにも気を使い、それなりに張りがありました。ところが1人になってだれのために、なんのためにやるんだろうという気持ちに左右されてすべてに手を抜くような生活になっていましたが、この会合に参加することで友達もでき、励まされたりまた逆に励ますような立場になって寂しさもうすらいできました。

しかし、正月だけはダメですね。年末から年始にかけて会合はなし、親しい友達も別世界の人の感じで電話するのも気後れしてできない。孫を連れた子どもたちもひとときのにぎわいを残してお年玉をやれば去ってゆく。あとの寂しさは身に沁(し)みる」と。

離婚して11年のWさん(62歳)と、シングルを通してきたSさん(61歳)はともに特技をもち、キャリアウーマンとしてたくましく生きている。Iさんの話に相槌(あいづち)を打ちながら2人が、

「つまらないことと思いますが、戦後変わったことで気にさわることは、教育制度が6・3・3制になったことと年齢を満年齢にしたことです。教育のことはさておき、昔は数え年でした。お正月がくると家族が揃って年をとりました。祖父母、両親、子どもたちが、年があらたまりそれぞれの希望と夢を語り合い祝うことで家族の絆をそれとなく確かめ合った思いがあります。それがいまでは一人ひとりの誕生日で年をとるということで、シングルライフのひがみかも知れませんが、新年をふくめて年末年始は大型連休という感じです。
しかし正月の連休はゴールデンウィークとちがって仲間は家庭中心で相手をしてくれません。シングル同士が一流レストランで豪華な食事をとっても、帰る部屋の灯が消えているわびしさはそれは厳しいものです。そこで2人で考えたことですが、『ニュー・イヤーズ・メイト』(正月の仲間)をつくろうと思うのです。それをきっかけとして新しい人間関係を広げて生きたい」と。

新年のご多幸を祈ること切なり。