育児から育自       

  

最近、同じようなケースで相談されました。子どものことで始まる話は、よくよく聞いてみると、お母さんの心の中に子どもの頃からずっと巣くっている満たされない思いが話の端々に出てきます。

お母さんが子どもの頃お母さんから受けた影響をひきずって、今、子育てをしている、そんな思いをすることがしばしばあります。

例えば、「悪口を言われた」「仲間に入れてもらえない」と訴えた時、「悪口を言われないように、みんなと仲良くしなさい」と傷ついた心そのままをいやしてもらえずに、何時でもしっかりしなければ、頑張らなければ、弱音をはいてはいけないと、つっぱって大人になったお母さん。

また、尊敬している立派なお母さんを意識して自分の感情を抑えて暮らしているうちに、いつの間にか無感動な自分になっていた。そして、友達が集まっては人の噂話をし、陰口を聞いているのを見ると「人の悪口を言ってはいけないわ」と、つい口がすべり、友達からうとまれ仲間外れになっている。

そのお母さんの子が、友達の輪に入れない、数人集まればすぐ仕切って嫌がられる。お母さんの心の中には、思いきりお母さんに甘えたい、尊敬できるお母さんよりドジでも温かい、胸の中にうずくまりたいと願う心が涙となり、我が子の孤独な姿の中に自分の幼い日の姿をだぶらせているのだと思います。

子どものことばかり考えて案じていたお母さんも「母と子のつどい」で他人の母と子のやりとりを見、話を聞いて自分のもやもやの原点を見付け、何から始めたらいいかを考え始めたのです。

うんと甘えて、思い切り抱きしめられて育っていないと思う心は、いまだに人への甘えを許さないし、方法もわからない。でも、抱きしめられて育った子ども時代を幸せ気分で思い出せるお母さんは、何とも言えない甘い幸せ気分で子どもを抱きしめているものです。でもそんな思いを持たない人でも、してもらえなかった分、今、我が子を抱きしめ、慈しむことで、何か温かい通い合うものを感じられると思うのです。気が付いたらやってみる、気になったら話してみる、どうするのが良いかを考え、やってみる。そんなところから少しずつ自分の思いがほどけていくのではないでしょうか。