育児から育自       

  『現代的幼児虐待』とは

以前、母親が知人宅に外泊した留守にマンションに残された幼い子ども3人が空腹に耐え切れず、4歳の長女が、料理をしようとしてガスを使ったことから出火し、3歳の次女、1歳の長男が焼死したという痛ましいニュースが報じられました。

4歳の女の子が3歳、1歳の妹弟をどうやって一晩面倒を見ていたのでしょうか。夜中に「おしっこ」と言ったら、眠いのにヨチヨチと、トイレへ連れて行ったのでしょうか。朝起きて「おなかすいた」という妹弟たちに何を食べさせようとしたのでしょう。どんなに心細かっただろうと胸が一杯になりました。

我が家にも、今日4歳になった孫がいます。この年の子がと、人ごとではなくふびんでたまらない思いが込み上げてきました。幼児だけを密室に置き去りにするのは「育児放棄」であり、幼児虐待です。

東京・世田谷の「子ども虐待防止センター」に寄せられた相談件数は、開設以来5年間で13000件以上で、その半数は明らかに虐待と思われるものであり、またその大半は、いわゆる「現代的虐待」と言われるものだそうです。外からは何の問題もないと思われる、経済状態も知的水準も普通の家庭に幼児虐待が起きています。今、子どもたちが親から受けている虐待からは、貧しさから酷使された昔の子どもたちや、離婚・再婚・再々婚と繰り返される中での憎しみや邪魔者扱いの虐待とはまったく違った現代の虐待の様子が浮かんで来ます。

何故、親による子どもの虐待が多いのか、理由を挙げれば、色々あると思います。でも原因を探っていっても、今すぐ大人たちのストレスが解消されるというものでもないし、早期教育に走る現象が止まるでもなく、核家族化、少子化に歯止めがかかるというものでもないと思います。大きくゆっくり回る歯車のごとく、社会の要求、要望など様々な要因の中で、あり過ぎる情報に不安を抱きながら、孤独な子育てを強いられている特に母親たちに、肩の力を抜いて、我が子をありのまま受け入れ、ともに育っていこうという育児の喜びを知っていただきたいと願っています。そのためには、虐待にまで追い詰められないように周りの人々が気にかけ、声を掛け、一人ぼっちにしないことではないでしょうか。「周りに同じような仲間がいるよ」って言ってもらえたら、少し気が楽にならないでしょうか。