皆様にはお元気でご活躍のことと存じます。

さて17年程前のことになるでしようか。毎月「くらしのこころ学セミナー」に参加して下さっていた私の親しい友人のお子さん(小6)が、クラスメート10人程と横浜市内の有名デパートで文房具の万引きをして見つかりました。突然警察からの電話は「デパートへ謝りに行くように」という話だったそうです。
私の開催しているセミナーに、初めて参加された方と話をしている時のことでした。

友人は他のお母さん達からの電話も入り、「デパートへは子どもを連れずに親だけで謝りに行きましょう」と誘われ、親としてどうすればよいのかという相談を私達にしてこられました。当然子どもに謝らせるべきことと言いましたら、他のお母さん達と話し合う中で「みっともないことだし、そんなに大袈裟に考えなくてもいいのよ」と言われたそうです。母親たちの勢いに負けそうな自分の気持に勇気を持って子どもに謝らせたいとの思いをセミナーの仲間にも支えられ、一人別 行動をとることになりました。

子どもと2人でデパートに行って責任者に会い、何度も謝る親の姿に、またお金を払おうとする親の態度に、責任者は子どもに対して厳しく叱り続け、二度としない約束にと親子で書類に拇印を押させ、小さな親指で押し、「ごめんなさい」と頭を下げる息子に涙が止まらなかったという。

2人でデパートを出て帰る途中、息子に「お母さんとっても辛かったけどあんたも辛かったでしょ」と言うのが精一杯でしたと語る。息子がそれまでは海外出張のお父さんには黙っててと言いつづけていたのに「お父さんが帰ってきたら、僕ちゃんと話して謝るからね」と一言言ってくれて、ご主人が帰国した際は、本当にきちんと話して謝ったそうです。

父親は「お母さんの言うことを素直に聞いてくれてありがとう。もうお母さんを悲しませないようにね」と言われたそうです。

親として大切なことを間違えると子どもの一生に大きな違いが出てきて取り返しのつかないことになりかねなかったと、学び合いの喜びを語ってくれた彼女の言葉が胸に強く残りました。

平成11年9月