食 育

第2回 「子どもたちは食べることを大切にしてほしい!」

子供の食を守る

「食」は成長する子どもにとって、最も大切なも。食べたものが健康な体もつくり、病気もつくるからです。子どもにとっての「食」は大人以上に大切で、この時期に食習慣や味覚が作られますし、食を通じた人間関係づくりや精神的な人間形成が行われる時期でもあるからです。

私は長年学校で学校給食を通して子どもたちの食を見てきましたが、極端な偏食、少食、アレルギーの子どもの増加(子どもの3人に1人の割合)、肥満ややせ、孤食(一人で食べる)や個食(個人がばらばらで食べる)、子食(大人と子どもの食事内容が別)、さらには朝ごはんを食べない子が増え、食べていても食事内容が問題であったり、よくかんで食べないなど、心配な状況があります。最近、給食時間の子どもたちの食べ方をみると、食べたことがないもの、嫌いなものは食べたくない子どもがいたり、食器を持たずに食べたり、箸が正しく持てなかったり、食器の置き方が違っていたりと偏食や食事のマナーが気になっています。

学校給食は成長期の子どもたちへの栄養管理、望ましい食習慣の形成を目的に行われています。平成18年には栄養教諭制度ができ、学校給食法も改正され、学校給食を通しての「食育」が強化されることになり、学校栄養士の果たす役割がますます重要になりました。「食育」は「生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるべきもの」と言われます。さまざまな経験を通じて『食』についての知識と、自分で『食』を選ぶ力を身につけ、心と体が生涯健康であるために正しい食生活ができる人に育つためにとても大切です。

私も給食時間だけでなく、授業などで食に関する指導を担任とともに行ってきました。子どもたちに関心や実感を持って食べてもらいたいと、給食時間に献立や食材、味、栄養、生産や食事マナー、よくかんで食べること、お茶碗にご飯粒を残さないことなどについて、クラスを訪問して指導しました。成果はすぐに現れるものではありませんが「食習慣」といわれるように、毎日の積み重ねで身についていくものです。3学期には苦手な食べ物も食べられるようになった子どもも増え、お茶碗にご飯粒がほとんどついてないものが返ってくるようになりました。指導の成果が目にみえてわかり嬉しく思いました。

いつでもどこででも食べ物が手に入り、食べることができる飽食の時代に、食に関心を高めたり、偏食を直したりするためには、自分で料理をすることが良いのではないかと思い、今まで勤務した学校では夏休みなどに家庭科室で料理教室を行ってきました。「食の自立」=「生活の自立」です。まさに「食べることは生きること」。自分で料理ができることは生きていく上で大切なことです。

学校での料理教室だけでは食育の機会が少ないので、地域の公民館講座での子ども料理教室や、前任校では保護者スタッフや調理員さんと一緒に子ども料理教室も行いました。4年前からは、食に関心を持たれている「野菜ソムリエ」の方と、公民館の主催講座で低学年を対象にした料理教室「食のソムリエっ子講座」を行っています。自分でごはんが炊ける。三角おむすびができる。みそ汁を作ることができる。卵焼きができる。五味がわかる。そんな子どもを育てることを目標にした7回連続講座で、最後は修了試験を行います。毎回子どもの調理技術、包丁の持ち方、切り方、おむすびの握り方・形などを記録して、子どもたちの成長を確かめます。手のひらの上で豆腐を切る時は、子どもたちも緊張し、真剣になって切っていました。卵焼きが上手に出来たときはとても嬉しそうでした。子どもたちは自分がつくったものをおいしそうに食べています。毎回家庭でも練習するように声かけを行い、回を重ねるごとに包丁を使うにも自信がついて、「料理は大変だけど楽しい」と実感している子どもも多くいます。 学校栄養士としてこれまで、給食を楽しみにしてくれている子どもたちのために、学校給食の内容を充実させたい、栄養士の力を発揮できる制度にしたい、子どもに食の大切さを伝えたいとの思いで仕事やさまざまな取り組みを行ってきました。食育をすすめるには微力ではありましたが、「食って大切。食事マナーに気をつけて食べよう。料理って楽しい」ということが子どもの心に残ってくれていたらいいなと思います。

これからは「岡山市の学校給食をみんなで良くする会」の事務局長として、「学校給食」を応援する取り組みを行いたいと思います。


こんどう あけみ
岡山県立短期大学 食物科卒業。
1977年から岡山市立小学校で学校栄養士として勤務し、平成26年3月末に退職。
岡山市職員労働組合学校支部役員を30 年務める。
現在「岡山市の学校給食をみんなで良くする会」事務局長。



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